東京都立高等学校(共通問題) 2023年出題傾向リサーチ
出題傾向リサーチ
英語
1 リスニング問題:小問数5
例年通り問題Aと問題Bに分かれています。問題Aは3つの対話文とその内容に関する質問がひとつずつ放送され、答えとして適切なものを選ぶ形式でした。問題Bは外国人の先生が中学生に向けて行ったスピーチについて、放送された質問に対して適切な答えを選ぶ形式と英語で記述する形式でした。
2 図表の読みとり(約620語):小問数4
1と2は高校生とアメリカからの留学生の短い対話文を読み、付随する表やグラフの情報を参考に、文中の空所に適する語句を選ぶ問題でした。解答の根拠になりそうな情報が多く、取捨選択がポイントでした。3は帰国した留学生とのEメールのやりとりで、(1)の内容選択問題では時や場所への注意が求められました。(2)は返信メールの一部を3つの英文で書く問題で、簡潔にまとめて手堅く得点したいところでした。
3 対話文の読解(約720語):小問数7
3人の高校生とアメリカから来た留学生が、発表前の不安な気持ちへ対処する方法について語り合う対話文でした。指示語の具体的な内容を問うものが多く、下線部前後のセリフを中心に内容を確認することで得点できるものでした。また、similarやencourageなどの使い慣れていない語彙も語注なしで読むことが求められました。
4 物語文の読解(約730語):小問数7
主人公が、ホームステイに来たカナダからの留学生との交流を通して成長する様子を描いた物語文でした。登場人物の振る舞いや心情を軸に読み進めることがポイントで、問4の(2)は、選択肢の内容を正しく理解しないと間違える可能性がありました。全体で2000語を超える英文を読む必要があったため、意識的に時間配分を行えたかどうかが正答率を左右したと言えます。
数学
1 小問集合
〔問1〕から〔問6〕までは計算問題、〔問7〕は色のついた玉の確率、〔問8〕は円と角度、〔問9〕は作図の9問からなる小問集合でした。いずれも例年通りの難度でした。
2 文章題
例年通り「先生が示した問題をもとにして生徒が問題を作った」という設定でした。図形の周りの長さや面積を調べる問題で、〔問1〕は与えられた条件を正確に把握できれば難しくありません。〔問2〕の証明問題も東京都立校の受検生であれば、類題を演習したことがあると思われるので、丁寧に式変形を行い、記述したいところです。
3 一次関数
過去3年間は二次関数が出題されていましたが、2023年は一次関数のみの出題でした。〔問1〕は座標、〔問2〕は直線の式を求める基本問題です。〔問3〕は面積の条件をどのように利用するかで計算量に差が出た問題でした。方針が立たず、戸惑った受検生もいたことでしょう。
4 平面図形
等脚台形の辺上にある点を結んでできる図形に関する問題でした。〔問1〕の角度、〔問2〕①の証明問題は基本的な難度ですが、②の面積比は複数の相似を利用し、やや複雑な処理が必要なため、難度の高い問題でした。
5 空間図形
正四面体の辺上にある動点を結んでできる線分と立体に関する問題でした。〔問1〕の表面上の最短距離は、条件を満たす動点の位置を正確に把握する必要がありました。〔問2〕の体積は、類題を解いたことがあるかどうかで差がついたと思われます。
国語
1 漢字の読み取り
例年通りの5問構成です。受検生にとって身近な語句を中心に問われています。
2 漢字の書き取り
こちらも5問構成です。いずれも標準的な難度でした。
3 清水晴木『旅立ちの日に』
バレリーナを引退した主人公が、故郷の人々と交流する様子を描いた小説文からの出題です。2022年はリード文がありませんでしたが、2023年はリード文がついた従来の形式に戻りました。平易な言葉遣いの文章で、読みにくさはありません。記号選択5問という構成で、いずれも登場人物の心情を的確に理解したうえで選択肢を吟味する必要がありました。
4 信原幸弘『情報とウェルビーイング』
フェイクニュースを題材に挙げ、情報社会を生きる人間のあり方について論じた文章からの出題です。文章の後半では、対比構造に注意しながら筆者の主張を読み取る必要がありました。記号選択4問のなかには、例年同様、特定の段落の役割について正しい説明を選ぶものが含まれています。また、200字の作文も例年通りの形式で、具体例を挙げつつ本文の内容もふまえた意見を述べることが求められました。
5 円地文子・吉田精一の対談/塚原鉄雄の文章 /『新編日本古典文学全集』
『枕草子』『源氏物語』についての対談と原文を含んだ解説文、原文の口語訳からなる出題でした。2021年以降文章の組み合わせはさまざまですが、設問構成に大きな変化はありません。記号選択5問のうち3問が知識事項だったので、手早く解き終えたいところでした。
理科
1 小問集合(物理・化学・生物・地学)
例年通り、物理、化学、生物、地学の4分野から、基本事項を確認する問題でした。2021年のような計算問題や、複数の選択肢をすべて正解する必要のある完答形式の問題、2022年のような見慣れない問題は出されず、対応しやすい内容でした。
2 小問集合(物理・化学・生物・地学)
例年通り、物理、化学、生物、地学の4分野から、レポートの内容を読んで考察する問題でした。条件を読み違えやすい問題や、やや細かい知識を確認する問題が出されたため、戸惑った受検生もいたことでしょう。2022年には出されなかった完答形式の問題も出されました。
3 天気(地学)
問1で、やや書きにくい文章記述の出題がありました。文章記述の出題は、2022年には見られず、2021年には短文の記述がありました。完答形式の問題が2問あり、基礎的な内容ではあるものの、ミスをしやすいつくりでした。
4 人体(生物)
いずれも基礎的な内容で、仮説と検証をテーマとした問題も、例年通り典型的なものでした。高得点を狙いたい大問です。
5 イオン(化学)
一部でやや間違えやすい観点を取り上げているものの、基本事項を確認する問題が中心でした。また、2022年と似た観点からの出題も見られました。
6 電流(物理)
問3は条件設定が複雑な計算問題で、やや高度な分析力が求められました。その他は比較的解きやすく、対応しやすいものでした。また、記号選択で、問2は6択、問3は5択となっていて、2022年に引き続き、選択肢が多い傾向が見られました。
社会
1 小問集合
例年通り地形図を用いた問題が出されました。選択肢として与えられる断面図の目盛りや、地形図の等高線、資料における文章の内容を細かく照らし合わせることが必要で、与えられた情報をすべて活用した総合的な判断が求められる難度の高いものでした。
2 世界地理
例年通り、与えられた資料から国や都市を特定する出題形式でした。例年よりもヒントが分かりやすく、解きやすい大問でした。
3 日本地理
例年通り、与えられた資料から都道府県や地点を特定する出題形式でした。空港の統計を用いた問題は東京都立校では出題例が少なく、解答を絞りこむところまでいったとしても、正答にたどり着くには細かい知識が必要でした。
4 歴史
すべての小問が時期の特定に関わるものでした。安土・桃山時代から江戸時代にかけての経済史は、政権の時期や担当者、政策内容の正確な把握が求められる定番のものでした。また、明治時代の産業史は、明治初期・中期・末期における産業発展の流れを理解していなければ解けない難度が高い問題でした。
5 公民
例年出題される基本的人権の分類がある一方で、公共料金に関する詳細な知識を問うもの、国税・地方税の区別という過去の入試問題ではほとんどみられないものも出ていて、小問ごとに難度が大きく異なりました。
6 総合
ここ数年続いていた世界史分野の年代順並べ替え問題ではなく、以前のような文章から国を特定する形式に戻りました。選択肢に複数のヒントが与えられていたので、丁寧に吟味すれば正答できるものがほとんどでした。