筑波大学附属駒場高等学校 2023年出題傾向リサーチ(数学解答速報も公開中)
出題傾向リサーチ
英語
1 リスニング問題:小問数7
例年通り、問1と問2に分かれています。問1は短い英文の書き取りが2問、問2は物語の内容に関して、英語の質問に日本語で答える問題が4問、選択肢から記号を選んで答える問題が1問出されました。問2の放送は1回だけです。
2 エッセイの読解(約910語):小問数8
「ドリトル先生」の著者を父に持つ作者によるエッセイでした。例年以上に文章全体の内容をふまえるべき問題が多く出されました。下線部に込められた作者の意図を日本語で記述する問2は、答え方に悩む受験生も多かったと思われます。文脈に合うように与えられた英語を並べかえる問3では、知覚動詞についての正確な理解が試されました。また、文脈に合うように本文中の空所に2語を補う問4では、本文に出てくる語を組み合わせるという条件がついていて、非常に難しい問題でした。文章の結末部分の空所に2語を補う問8も、文章全体から作者の父への気持ちを汲み取る必要がありました。
3 物語文の読解(約630語):小問数6
エレベーターで乗り合わせた男性の奇妙な言動に悩まされる主人公を描いた物語でした。大問2と同様、多くの問題で本文の内容への深い理解が求められ、一問一問に時間がかかったと思われます。文脈に合うように空所に5語程度の英語を補う問4では、仮定法の知識が必要でした。物語の結末の面白さを50字以内の日本語で記述する問6は、2022年に続く出題形式です。
4 自由英作文:小問数1
おすすめの観光地についてのスピーチ原稿を40語以上50語以内の英語で書く問題でした。身近なテーマであり、受験生の多くはこれまでに似たようなテーマで英文を書いたことがあると思われます。短い時間でうまくまとめられたかどうかがポイントでした。
数学
1 二次関数
複数の放物線上において、ルールに従って作った点を結んでできる図形について考える問題でした。図と見た目の文章量に戸惑った受験生もいたと思いますが、解き進めていくなかで、問題の意図に気づけたことでしょう。ケアレスミスに注意し、確実に正解しておきたいところです。
2 数の比較
0、2、3を用いて表せる数に関連して、2と3の累乗で表せる数の大小を考える問題でした。筑駒高で出される整数の問題としては取り組みやすいと感じた受験生も少なくなかったと思われます。しかし、例年通り丁寧に考えていく必要があり、決して簡単な大問というわけではありません。
3 三角形と面積比
辺の長さが平方根を含む複雑な数値である三角形に関する問題でした。(2)までは解法に悩むことはありませんが、正確な計算処理が求められました。問題を解き進めながら、出題の意図に気づきたいところです。
4 半正多面体
正方形6個と正六角形8個で囲まれた多面体に関する問題でした。筑駒高の受験生であれば、(2)(イ)までは確実に正解しておきたいところです。(ウ)については、時間内に正解するのは難しかったと思われます。
国語
1 須藤靖の文章
物理学的な物の見方の限界について述べた論説文からの出題でした。文章量は2022年の約半分で、例年とほぼ同じ水準に戻っています。記述は全5問で、いずれも字数制限は設けられていないため、解答欄のサイズに応じて何をどこまで説明するのかを適切に判断していく必要があります。それぞれの設問に込められた意図に鋭く反応できたかどうかで、大きな点差が生じた大問だったと言えます。漢字の書き取りは全5問で、同音異義語には注意が必要ですが、いずれも標準的な難度でした。
2 奈倉有里『ゲルツェンの鐘が鳴る』
ロシアに留学していた筆者が当時の体験を回想する形で綴った随筆文からの出題でした。テーマはやや硬質ですが具体的な描写も多く、読み取りにくさはありません。大問2としての文章量は2022年とほぼ同等で、字数制限のない記述4問が出されている点も共通しています。すべての設問で傍線部の換言説明が求められていますが、適宜自分で言葉を補いながら解答を充実させていく必要があるため、受験生にはハイレベルな思考力・表現力が求められました。
3 『蒙求和歌』
中国の故事を題材にとった古典作品からの出題でした。文章内容に即した和歌が一首添えられていますが、ストーリーそのものはシンプルなので、和歌の大意を掴むことは難しくありません。定番の仮名遣いに関する問題をはじめとして、設問は全体的に基礎~標準レベルの難度だったので、2022年に引き続き高得点勝負になったものと考えられます。記述は1問のみで、論理の流れに注意しながら丁寧に答案をまとめていくことが求められました。
理科
1 細胞(生物)
植物を食塩水に浸したときに起こる変化を、実験の写真を見て考察する問題です。見慣れない観点の出題でしたが、比較的取り組みやすい内容でした。
2 動物(生物)
カイコに関する文章を読み、考察を進めていく問題です。正確に文章を読解していく必要があるうえに、判断に迷う選択肢が出され、高度な分析力が求められました。記述問題についても、字数制限のなかで、適切な解答を出すことに苦慮した受験生も多かったと思われます。
3 地質(地学)
チバニアンを題材にした文章を読解して考察する問題や、地質に関する知識や計算の問題でした。一部細かい知識も出題されましたが、高得点を狙える大問でした。
4 中和(化学)
中和に関する計算問題やイオンのしくみに関する問題です。いずれも標準レベルの典型問題で、類題で演習を重ねていれば十分に対応できる内容でした。
5 電気分解(化学)
塩化銅水溶液と塩酸の電気分解に関する基本問題です。全体を通して基礎知識を確認する内容なので、ここでの失点は避けたいところです。
6 電流、磁界(物理)
LEDを用いた実験において、問題集の内容と実際の実験結果が異なることについて考察していく問題です。見慣れない形式のため、条件を丁寧に読み取り、注意深く解き進める必要がありました。実験結果を分析する問題で差がついたと考えられます。最後の記述問題も見慣れない内容で、生じている問題点の本質を見極める力が要求されました。
社会
1 地理・歴史融合問題
横浜の歴史に関する文を題材とした問題でした。地理分野からの出題が中心でしたが、歴史に関する文が題材であることもあり、解答を導くために歴史の知識を必要とするものも一部みられました。貿易に関しては輸出品目を問う定番のものではなく、輸送手段といった一歩踏み込んだ内容を問うものでした。ただし、文章記述問題も含めて得点しやすい難度のものが中心なので、確実に得点を積み重ねておきたい大問でした。
2 歴史総合
人の移動や旅に関連する4つの史料を題材とした問題でした。4つのうち3つの史料は多くの受験生が初めて目にしたのではないかと思われるものでした。一つ一つの史料にボリュームがあり、文体もやや読みにくいものであったため、史料を丁寧に読みとり、時代を特定するキーワードや記述問題における解答の要素を丁寧に抽出していくことが求められました。
3 歴史・公民融合問題
近代教育の歴史と今の教育が抱える問題に関する文を題材とした問題でした。公民分野の内容を中心としながらも、世界史の年代把握や日本史の正誤判断など、歴史分野の問題も含まれていました。また、リード文の内容を読み取り、空欄を補充する形式やグラフを見ながら選択肢の正誤を判断する形式などがあり、横断的な知識やさまざまな出題形式に対応する力が求められる筑駒高らしい大問でした。