読書のすすめ 〜SAPIX講師の「推しの一冊」〜 ※2024年11月更新
コラム
こちらの記事では、小・中学生の皆さんにSAPIX中学部の講師が「推しの一冊」を紹介します。読書をすると今まで知らなかったことを知り、視野を広げることができます。この一冊が新しいことに興味関心を持つきっかけになるかもしれませんよ。
目次
- 英語科講師の”推し”『風の影』(著:カルロス・ルイス・サフォン/訳:木村裕美)
- 社会科講師の”推し”『日本列島100万年史 大地に刻まれた壮大な物語』(著:山崎晴雄・久保純子)
- 国語科講師の”推し”『嵐が丘』(著:エミリー・ブロンテ/訳:鴻巣友季子)
- 国語科講師の”推し”『歌詠みに与ふる書』(著:正岡 子規)
- 英語科講師の”推し”『君たちはどう生きるか』(著:吉野 源三郎)
- 国語科講師の”推し”『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』(著:小山 鉄郎/監修:白川 静)
- 理科講師の”推し”『14歳からの宇宙論』(著:佐藤 勝彦/マンガ:益田 ミリ)
- 国語科講師の”推し”『武士道シックスティーン』(著:誉田 哲也)
- 英語科講師の”推し”『青空のむこう』(著:アレックス・シアラー / 訳:金原瑞人)
英語科講師の"推し"『風の影』(著:カルロス・ルイス・サフォン/訳:木村裕美)
書籍概要
タイトル | 『風の影』 |
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著者 | 著:カルロス・ルイス・サフォン 訳:木村裕美 |
出版社 | 集英社 |
ISBN | (上)9784087605082 (下)9784087605099 |
スペイン・バルセロナの書店の息子ダニエルは、ある日父親に「忘れられた本の墓場」に連れていかれました。そこでダニエルはフリアン・カラックスという作者の『風の影』という本を見つけ、その本を守ることを誓います。
数年後、青年になったダニエルの前にライン・クーベルトと名乗る不気味な男が現れ、『風の影』を渡すように要求します。このライン・クーベルトというのは『風の影』に登場する悪魔の名前でした。
『風の影』を守るために、ダニエルは年の離れた友人フェルミンや幼なじみトマスの妹ベアとともに、作者フリアン・カラックスの過去をたどり始めます。
紹介者の「推し」ポイント
この物語と出合ったのは本屋でも図書館でもなく、当時通っていた塾でした。自分の志望校の英語の過去問としてこの本の一節が出てきたのです。
それはダニエルとライン・クーベルトが初めて出会う場面で、不気味な相手がダニエルにどんどん迫っていく様子が印象に残りました。過去問演習ということを忘れて物語にのめり込み、後日友人に「こんなに面白い話が出た!」と報告したら、「入試問題を面白がるなんて……」とドン引きされました。
晴れて志望校に合格した後はすっかり忘れていたのですが、大学生の時にこの本に再会しました。わくわくしながら読み始めたのですが、スペイン内戦から第二次世界大戦にかけての時代で、物語に漂う雰囲気が重く、また暴力的なシーンや品のないせりふも多くて、気疲れすることもありました。
このことを踏まえると、皆さんが読むには少しハードルが高いかもしれません。しかし、私が入試問題で読んだ場面のようにハラハラドキドキする展開がたくさんあり、また謎の多いフリアン・カラックスの過去が明らかになる過程がとても面白いのでおススメです。
―紹介者― 英語科 河野
社会科講師の"推し"『日本列島100万年史 大地に刻まれた壮大な物語』(著:山崎晴雄・久保純子)
書籍概要
タイトル | 『日本列島100万年史 大地に刻まれた壮大な物語』 |
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著者 | 著:山崎晴雄・久保純子 |
出版社 | 講談社 |
ISBN | 9784065020005 |
日本列島がどのように形作られたのかという基本的な内容から始まり、各地方を詳しく見ていく中で、それぞれの特徴的な地形や、なぜそのような地形が形成されたのかについて、豊富な図や写真を活用して解説してくれます。
入り口は基本的な内容ですが、そこからさらに深く広く周辺知識を解説してくれるので、とても読みやすい1冊です。読み終わる頃には、皆さんが普段何げなく通っている道や上っている坂、電車に乗っているときに渡る川がどのようにして形成されて現在に至るのかについて、疑問を感じずにはいられなくなっていることでしょう。それぞれの章がある程度独立しているので、初めからでなくても自分の興味のある地方から読み進めても構いません。
紹介者の「推し」ポイント
この本は私に地理ブームをもたらした1冊です。社会人になるまで地理についてほとんど専門的に勉強してこなかった私にとっては、さまざまな新しい視点を与えてくれた本でした。地理分野の知識には知っているようで、いざ原因まで掘り下げてしっかりと他人に説明しようとすると難しい内容が多いのですが、そういったニーズにもこの本は十分に応えてくれます。皆さんにとっても授業で聞くような単語が多く、とっつきやすい内容だと思います。
地理についてもっと知識を深めたい場合は、講談社のブルーバックスのシリーズに『フォッサマグナ』や『日本列島の下では何が起きているのか』などの書籍があるので、オススメです。書籍だけで物足りない場合は、各地にあるジオパークなどに足を運んでみてください。皆さんが立っている大地は、思っている以上に壮大な歴史を歩んでいます。
―紹介者― 社会科 吉免
国語科講師の"推し"『嵐が丘』(著:エミリー・ブロンテ/訳:鴻巣友季子)
書籍概要
タイトル | 『嵐が丘』 |
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著者 | 著:エミリー・ブロンテ /訳:鴻巣友季子 |
出版社 | 新潮社 |
ISBN | 9784102097045 |
1801年、英国ヨークシャーの荒野に立つ屋敷「鶫(つぐみ)の辻」を借りたロックウッドは、大家の住む屋敷「嵐が丘」で奇妙な体験をしました。二つの屋敷で過去に何があったのか、事情を深く知る家政婦が語るのは、1人の男の愛と憎しみを軸とする、悲しくも美しい物語でした。
1847年、ビクトリア朝の英国で刊行された本書は、その斬新さから当初は酷評されましたが、時代や国境を超えて読み継がれていく中で、世界文学の代表作の一つにも数えられる作品となりました。日本でも数多くの翻訳が出版されてきましたが、今回は当時中学生だった私が実際に手に取った鴻巣訳をお薦めします。やや独特な言葉遣いもありますが、平明で読みやすく、作品世界に没頭するのにうってつけの訳文です。
「名作だ」と大人から言われるとかえって読みたくなくなるものですが、複雑ながらも適切に処理された構成で語られる緊迫感のある物語は娯楽としても一級品です。海外小説を自分から読んだことがない人の第一歩にもふさわしいと思いますので、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
紹介者の「推し」ポイント
私は中学生の時、表紙の絵にひかれて何げなくこの本を読み始めました。少し分厚い文庫本なのですが、読了するまで頭の中がこの作品のことでいっぱいになり、夢中でページをめくったことを覚えています。改めて振り返ると、その後の私の趣味・嗜好を形作った一冊であるといっても過言ではありません。長いカタカナ名の登場人物たちは、時に理解を拒む奇異な考えを起こし、行動します。大げさかもしれませんが、私は海外文学に熱中する中で、「こんな人もいるんだな」とまずは相手をそのまま受け止めようと心掛ける意識を育ててきたように思います。
そして同時に、海外文学は人間の感情の普遍性も教えてくれます。『嵐が丘』では男が抱き続ける思いのみにくさと美しさが物語の核心となります。もちろん全てに共感することはできなかったものの、きっと自分にもあるのだろう、どうしようもない情念の一端を確かに感じ取ることができました。この本を読んでみて海外文学に興味を持った方は他の国、他の時代の小説にも挑戦してみてください(私はラテンアメリカ文学、ロシア文学が特に好きです!)。
幸い日本では世界各国の文学が多く訳されてきましたが、翻訳が出版されるのは読者あってこそです。私自身もまだまだ知らない世界の物語に出合っていきたいので、皆さんには次世代の海外文学愛好家になっていただきたいと熱望しています。一緒に荒野へ歩みを進めましょう。
―紹介者― 国語科 勝山
国語科講師の"推し"『歌詠みに与ふる書』(著:正岡 子規)
書籍概要
タイトル | 『歌よみに与ふる書』 |
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著者 | 著:正岡 子規 |
出版社 | 岩波書店 |
ISBN | 9784003101360 |
明治31年発表。正岡子規はこの歌論の中で、古来より和歌の手本とされてきた『古今和歌集』の技巧的な歌風を真っ向から否定し、『万葉集』や『金槐和歌集』の率直な感情表現を評価しつつ、写生に基づく作歌を主張しました。「貫之は下手な歌よみにて『古今集』はくだらぬ集に有之候」という一節に象徴される苛烈な論調からは、子規の和歌革新への気迫を伺えます。
写生を重視する文学理念は斎藤茂吉らアララギ派歌人に受け継がれ、文学史において旧来の和歌から近代短歌へと向かう一つの契機となりました。
紹介者の「推し」ポイント
「去年とやいはん今年とやいはん」は「呆れ返った無趣味の歌」、「わが身一つの秋にはあらねど」は「理窟なり蛇足なり」、「初霜の置きまどはせる白菊の花」は「つまらぬ嘘」……。
そうして古典和歌たちを次々と切り捨てていくこの歌論は、歌壇において当時主流だった美意識をくつがえすものであり、大きな反響を呼びました。
もちろん、これらの主張全てを真に受ける必要はなく、『古今和歌集』を「くだらぬ集」だと思う必要もありません。ここで子規が強く批判したのは、自分の眼でものをきちんと見ようとせず、先人たちの表現を安易に模倣する人々の硬直的な姿勢です。我々も普段、同じような表現を使い回してしまったり、見てもいないものを既成のイメージで語ってしまったりしていないでしょうか。『歌よみに与ふる書』に宿る批判精神は、その意味で現代の読者にとってなお刺激的なものです。
英語科講師の"推し"『君たちはどう生きるか』(著:吉野 源三郎)
書籍概要
タイトル | 『君たちはどう生きるか』 |
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著者 | 著:吉野 源三郎 |
出版社 | 岩波書店 |
ISBN | 9784003315811 |
母親と2人暮らしをしている15歳のコペル君(本名:本田 潤一)は友達の北見君がいじめにあって暴力を振るわれていた時に彼を助けずに去ってしまい、そのことは責められることなのか思い悩みます。それ以外にも作中の学校や社会で起こるさまざまなことについて、悩んだり、疑問に思ったりしたことを「おじさん」に相談し、おじさんの言葉を心に留め、答えを見つけて乗り越えていくという内容の本です。
おじさんはコペル君との何気ない会話をノートにまとめて成長した時に読ませようとしていますが、私たちの今後の生き方のヒントにもなる内容です。それらが各章の最後に「おじさんのノート」として掲載されているのもこの本の特徴です。
紹介者の「推し」ポイント
この本は初版の発売日が1937年7月と、約86年前に発売されたかなり古い本です。しかし2023年の今、目の前で起こっているさまざまな問題(いじめ、貧困、平等など)に対してのヒントにもなる内容がこの本の中にはちりばめられています。
過去に買って書棚の中で眠っていた本を読み返してみると、今に通じるものがあるというのが面白いところだと思います。
たくさんのテーマから成り立っているので最初のページから読むのではなく、自分が興味を持った章から読み始めてみたり、漫画版も発売されているのでそちらを読んでみたりするのもお勧めです。
コペル君が疑問に思ったこと、それに対するおじさんの言葉や「おじさんのノート」が、小・中学生の皆さんがこれからの人生の中で悩んだときにきっと役立つと思います。ぜひこの本を手に取って、どんな生き方をしたいかを考えるきっかけにしてみてください。
国語科講師の"推し"『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』(著:小山 鉄郎/監修:白川 静)
書籍概要
タイトル | 『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』 |
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著者 | 著:小山 鉄郎/監修:白川 静 |
出版社 | 新潮社 |
ISBN | 978-4101298917 |
日本で日常生活を送る中で、漢字を1日に1回も目にしない人はいないでしょう。一方で、漢字がどのようにして現在の形や意味になったのかを知っている人は多くないのではないでしょうか。漢字には、その一つ一つに成り立ちがあります。例えば「羊」という漢字は、“ひつじ”を正面から見た際の頭部と上半身の象形です。また、羊は古代中国で行われたとされる神判(神意を受けて行う裁判)における神への供え物として欠かせない存在だったそうで、神判の際に当事者の主張を事細かに聞き調べたことから、“ことば”を意味する「言」の字を付けて、「詳」という漢字が作られました。また、「美」という漢字も羊と関係が深く、これは羊を真上から見た形を表しています。神への供え物として用いるほどに重要な存在であったため、その見た目の“うつくしさ”もまた、重視されたのです。
この本は古代文字やイラストを使い、上記のような成り立ちを交えて漢字を紹介する一冊です。
紹介者の「推し」ポイント
SAPIX中学部では授業で漢字の知識定着のため漢字テストを実施しています。その際、直前までテキストを見つめている人がいます。
こうした覚え方をしている人は漢字を「目で見て暗記するもの」と認識してしまっているのではないでしょうか。そのような認識でいると仮にテストで正解することができても、時間が経てば読み方や書き方を忘れてしまいます。私はこの本を読んで、漢字の成り立ちを知ることが知識の定着につながると考えるようになりました。
また、語源を知れば一つの漢字から知識の幅を広げられます。例えば、私は「蔓延」に用いられている「蔓」の字の成り立ちが気になって調べてみたことがあります。この字は訓読みすると“つる”ですが、これは「草」を表す「艸」と、“ながい”を意味する「曼」という漢字から構成されています。確かに蔓は長く伸びています。その他には「曼」が「心」と組み合わさると、「慢」の字になります。「怠慢」や「自慢」という熟語からも分かるように、心が引き締まっていない状態を表しているといえます。また、魚偏が付くと細長い見た目の「鰻」になります。このように一つの漢字から関連付けてさまざまな知識を得られます。
語源や背景を知る行為は、英単語や歴史などの勉強にも効果的です。ひたすら頭に詰め込むのではなく、「なぜ」という部分に踏み込むことが、知識定着における一つのコツであると思います。この本を読めばきっとそのことを実感できます。ぜひ、読んでみてください。
- 漢字の成り立ちには諸説あります。
理科講師の"推し"『14歳からの宇宙論』(著:佐藤 勝彦/マンガ:益田 ミリ)
書籍概要
タイトル | 『14歳からの宇宙論』 |
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著者 | 著:佐藤 勝彦/マンガ:益田 ミリ |
出版社 | 河出書房新社 |
ISBN | 978-4-309-41700-4 |
この本では「宇宙は今どのようになっているのか」「宇宙はどのように誕生したのか」といった疑問に、インフレーション理論を提唱した研究者が答えます。始めにアインシュタインの相対性理論についての簡単な説明がされ、続いて「宇宙は膨張している」「宇宙はかつて小さな火の玉だった」「宇宙は無から生まれたのかもしれない」「宇宙は他にも無数にあるかもしれない」などのトピックが語られます。観測技術や理論の発展によって宇宙に対する考え方がどのように変化してきたか、順を追って理解することができるでしょう。また、あとがきでは、重力波の観測、ブラックホールの撮影といった最新トピックも説明されています。難解な理論が分かりやすく解説されていて、宇宙の成り立ちについて理解を深めることができる一冊です。
紹介者の「推し」ポイント
皆さんは、今まで知らなかったことを知って衝撃を受けたことがありますか? 私の場合は、高校1年生の時に読んだ本の中で、「速く動くと時間がゆっくりと進む」という相対性理論の考え方を知った時がそうでした。このことをきっかけに、「物理学を学びたい」という気持ちになったのを覚えています。
この本は、私が高校1年生の時に読んだ本よりも分かりやすく、より新しい宇宙論や観測事実まで取り上げています。特に興味深いと感じたのは、この広大な宇宙の成り立ちに、原子核や素粒子に起こる出来事が関係しているという点です。原子核や素粒子に関する理論が発展すると新しい宇宙論が誕生するというところに、壮大なロマンを感じました。
知識を得るということは、まだ知らない世界の存在を知ることでもあります。この本を読めば、宇宙についての知識を得られるだけでなく、自分にはまだ知らないことや理解できないことがたくさんあるのだと気付くことでしょう。もしかしたら「もっと知りたい」「勉強してみたい」という気持ちになるかもしれません。少なくとも、星空を見た時に目に映るものへの理解は変わっているはずです。皆さん、この機会に宇宙の成り立ちについて理解を深めてみませんか?
国語科講師の"推し"『武士道シックスティーン』(著:誉田 哲也)
書籍概要
タイトル | 『武士道シックスティーン』 |
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著者 | 著:誉田 哲也 |
出版社 | 文春文庫 |
ISBN | 978-4-16-778001-2 |
剣道で全国中学校体育大会準優勝の成績を持つ磯山香織は、市民大会で無名の選手に真正面からメンを食らい、四回戦で敗退してしまいます。負けた悔しさを片時も忘れず、次は必ず勝つという闘志を胸に進学した先の高校で、自分を負かした相手、西荻早苗と再会します。早苗は、中学で日本舞踊から剣道に転向した変わり種であり、勝ち負けにこだわらず、精神修養のために剣道をやっていました。そんな早苗に負けたことに納得がいかない香織は、ことあるごとに早苗に突っかかります。そんな中、勝利だけを信条にしていた香織は、試合を重ねるうちに次第に自分の剣道を見失ってしまいます。
迷い、悩みながらも剣道のこと、勝ち負けのことを見つめ、2人はお互いに影響を与えながら大切なことに気が付いていきます。剣道とは、武士道とは、2人が出した答えは何なのか、ぜひ、本を手に取って確かめてみてください。
紹介者の「推し」ポイント
私は高校生になって剣道を始めた時にこの本と出合いました。新免武蔵を心の師と仰ぎ、負けることは斬られることだと言ってはばからない強烈なキャラの香織と、感性は普通の女子高生に見えるものの、マイペースすぎるくらいのんびりした早苗という、全く異なる2人の視点が交互に描かれ物語は進みます。2人のかみ合わないやりとりがおかしく、気付けば2人のことが好きになっていました。クライマックスでは少し涙も誘われ、読後には爽やかな気持ちになれる青春小説です。
臨場感のある試合の動きに経験者はのめり込むこと間違いなしですし、剣道を知らなくても、何かに一生懸命打ち込んでいる人はきっと夢中になって、いつの間にか一緒に拍手したくなると思います。主人公2人は高校生ですが、彼女たちが悩み、壁にぶつかり、そしてそれを乗り越えていく姿は、小・中学生の皆さんにも勇気を与えてくれると思います。
香織、早苗がさらに成長した『武士道セブンティーン』、『武士道エイティーン』、『武士道ジェネレーション』と続編があり、他の魅力的な登場人物たちのサイドストーリーも読めます。ぜひ、手に取ってほしいと思います。
英語科講師の"推し"『青空のむこう』(著:アレックス・シアラー / 訳:金原瑞人)
書籍概要
タイトル | 『青空のむこう』 |
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著者 | 著:アレックス・シアラー / 訳:金原瑞人 |
出版社 | 株式会社 求龍堂 |
ISBN | 978-4-7630-1828-1 C0097 |
主人公ハリーはある日突然、交通事故で亡くなってしまいます。しかし、彼には心残りがありました。姉と喧嘩をしてひどいことを言ってしまったことを後悔していたのです。その未練を晴らすために、なんとか現世に戻って姉に謝ろうとします。
ハリーは約150年前に熱病で亡くなったアーサーと出会い、協力してともに現世に戻ります。生きている間は何てことないと思っていた学校へ行くと、クラスメートが悲しんでいて、自分が死んでしまったことを悔やむのでした。そして、自分の家に行き、姉に気持ちを伝えようとします。
果たして、ハリーは未練を晴らすことができるのでしょうか。その結末はご自身で読んで確かめてみてください。
紹介者の「推し」ポイント
私がこの本を読んだのは中学2年生の時でした。この本を読んで感じたのは、何気ない一日であっても本当はとても大切なものであり、無駄にしてはいけないということ。そして、自分の周りの家族や友人は、いつも側にいるのが当たり前かのように感じるけれど、そうではなく、一緒にいられることにもっと感謝すべきであるということです。
この本の興味深い点は、やり残したことを現世に戻ってもう一度やるというところです。中学生や高校生の時点でも「あの時に戻れればなぁ」と思うことはあり、それをやり直したいという気持ちには非常に共感できます。ただし、ハリーは一時的に現世に戻りますが、生き返ることはありません。つまり、完全に元に戻ることはできていないのです。そういったところから、小・中学生の皆さんも、今生きている一瞬が元に戻ってこない貴重な時間であるということを感じることができるのではないでしょうか。
今という瞬間の大切さ、家族や友人というかけがえのない存在について改めて考えさせられる作品だと思うので、ぜひ、一度読んでみてください。
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