【2022年高校入試分析】関西圏難関校
入試分析
入試の概況
昨年度はコロナ禍で、一部の学校の志願者数が減少しましたが、今年度はその揺り戻しもあってか増加した学校がみられました。
大阪府では、2018年から大阪府立の文理学科を設置する10校が普通科を廃止し、より大学受験に特化した学校になりました。その受験生は私立難関校も受験するようになって、関西圏の高校入試が影響を受けました。
それに先立つ2017年には英語外部検定活用が導入され、英語の民間検定の成績が高校入試に使われるようになりました。大阪府立校の文理学科の受験生では英検®2級以上取得者が大幅に増加し、その受験生が難関私立・国立大附属校も受験するため、求められる英語のレベルは相当上がっています。
私立・国立大附属の進学校では、大教大附池田校舎、西大和学園高など、志願者が増加した高校と、灘高、東大寺学園高、洛南高など、志願者が減少した高校に二極化しました。ただ、来年以降もこの傾向が続くかは予断を許しません。志願者数に左右されない確かな学力を身に付けることが重要です。
各科目の傾向と対策
英語
関西難関校の英語には、次の特徴があります。①多義語の知識問題…例えば、「story」に「物語」と「建物の階数」の二つの意味があることなど、多義語の知識を問う問題が頻出します。②比喩表現を日本語で説明する内容把握問題…これは長文に出てくる比喩表現を前後の文脈から類推して答えさせるものです。③英語で表現しづらい日本語を含む和文英訳…「その気になれば」「醍醐味」などを、知っている英単語でどう表現するかを問う出題です。④さまざまなテーマの自由英作文…ことわざや日常的な話題など、灘高、大教大附池田校舎、同志社高、関西学院高といった学校で出題されるため対策が必要です。
今後の学習ポイントでは①語彙と文法の強化、②長文中の日本語記述問題の経験値を上げる、③いろいろなタイプの英作文を書き添削を受ける、④リスニング演習を怠らない、などが重要です。
数学
関西難関校の数学には、①試験時間が長めで幅広い分野から出題される、②解答に至るまでのステップが多い、③設問の流れをくみ取る必要があるといった特徴があります。問題文を見ただけで解法がすぐに分かる問題ではなく、最終的に何が求められているのか、さまざまな要素を組み合わせながら解いていく問題が多いです。
合格に向けての学習では、過去問に触れて学校の傾向を把握することが重要。出題傾向が安定している学校が多いので、過去問演習が極めて有効です。また、解答までの課程を記述する習慣を付けることも大切でしょう。答案に途中式を書かせる難関校もありますし、どこで間違えたか、計算ミスがなかったか、後で自己検証しやすくなるからです。
国語
昨今の高校入試は標準問題が中心で、知識力と読解力が求められますが、灘高などを中心とした関西難関校では高い記述力も要求されます。また、東大寺学園高、西大和学園高、愛光高、大教大附池田校舎、洛南高などは、記述問題に加え、記号選択や抜き出しもバランス良く出題されます。書かせる問題が多いので、読みやすい字を速く書く練習も必要。関西圏では古文の難問が多いので、しっかりと対策をしましょう。
学習のポイントは、知識の土台をきちんと作ること。知識問題対策だけでなく、読解力を高めるためにも時間をかけて語彙を増やしていきましょう。また、どんな文章を読んでも、要点をつかむ訓練を重ねてください。文章を要約するのが効果的です。最後に、どんな問題が出されても同じ解法を使うことを意識し、普段通り解くことを忘れないようにしてください。
理科・社会
入試に理科が必要な学校は、大阪府公立高、兵庫県公立高に加え、早稲田佐賀高、愛光高、久留米大附設高、ラ・サール高、東大寺学園高、西大和学園高、灘高、洛南高、大教大附池田校舎など。公立は高得点勝負になりがちですが、私立・国立大附属校は高難度です。問題を基礎・標準・応用の3段階でレベル分けすると、難関校でも基礎問題の割合が多く、洛南高で7割、灘高で4割を占めますが、複数選択や完答形式が多く、知識の精度が求められます。標準問題では、原子・分子の質量を用いた計算問題が頻出。また、今年は学習指導要領の改訂に伴い、新たに加わった「イオン化傾向」「ダニエル電池」に関する出題が見られました。難関校対策では、中3夏前までに「知識+仕組みの理解」の土台を『一問一答』などで築き、その上に授業や演習で思考力と分析力、そして精度を積み上げていきましょう。
関西難関校入試における社会の難易度は、高い順に、東大寺学園高<西大和学園高・大教大附池田校舎<愛光高・洛南高<大阪府公立校・兵庫県公立校で、東大寺学園高は全国的に見ても最高難度です。高校別の入試対策について、愛光高・洛南高では公立校レベル+αの学習量を、西大和学園高・大教大附池田校舎では、学習量に加え、入試に向けた十分な演習量をこなしましょう。東大寺学園高では、時事問題に対して入念に対策し、教科書内容を超えた知識と、高いレベルの思考力・判断力+スピードを身に付けましょう。
- 英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。
- この記事は2022年3月18日~5月9日にかけて動画配信された「高校入試分析会 2022」のダイジェストです。