東京学芸大学附属高校(一般)2025年 教科別入試問題分析
教科別入試問題分析
英語

1 リスニング問題:小問数5
英文の放送を聞き、質問の答えとして最も適切なものを選ぶ問題です。2023年から、英文の放送は1回のみです。質問は問題用紙に印刷されていて放送されません。試験開始直後の実施のため、限られた時間の中で問題に目を通し、聞き取るべきポイントを把握しておく必要があります。
2 物語文の読解(約640語):小問数12
雪の中でたたずむ物乞いの女性に、通りかかった2人の男性がそれぞれのやり方で手を差し伸べる物語です。多くは内容に関する選択問題でした。問題が本文のどの部分と対応しているのかを正確に把握することができれば、迷いなく解けるものが多かったと思われます。物語文中の5つの空所に補うべき英文を選ぶ問3や、与えられた語句を並べかえて意味の通る英文を作る問5では、文脈把握力が特に求められました。
3 説明文の読解(約710語):小問数10
木造建築のメリットと可能性についての説明文です。大問2に比べ、より一層前後関係を正確に把握しなければならない設問が多く、紛らわしい選択肢もあったため、苦労した受験生もいたかもしれません。与えられた4語をそのままの形・順番で用い、自分で考えた3語を追加して文脈に合う表現を作る問7は、学芸大附高では頻繁に出される形式で、文法と文脈の両方からのアプローチが求められます。
4 説明文の読解(約630語):小問数14
動物園の掲げる理想と実態の乖離についての説明文です。すべて、内容に関する選択問題です。英文の書き出しに続く内容を、それぞれ4つの選択肢から選ぶ問題が10問もあり、新傾向であることとその分量の多さに苦労した受験生もいたと思われます。
年 | 長文読解 | 記述 | 文法 | リスニング | 発音・語彙 | |||||
① | ② | ③ | ④ | 日本語 | 英語 | 大問 | 長文内 | |||
2025年 | 物語文 | 説明文 | 説明文 | - | ● | ● | ● | |||
2024年 | 物語文 | 物語文 | 説明文 | - | ● | ● | ● | |||
2023年 | 物語文 | 説明文 | 説明文 | - | ● | ● | ● | |||
2022年 | 説明文 | 物語文 | 物語文 | - | ● | ● | ● | |||
2021年 | 説明文 | 物語文 | 説明文 | - | ● | ● | ● |
数学

1 小問集合
(1)平方根の計算、(2)2次方程式、(3)円と角度、(4)確率でした。2023年と同じ出題分野であり、難度の高い小問もなかったので、対策をしていた受験生であれば十分に対応できたことでしょう。
2 二次関数
放物線と直線でつくられる図形から座標を考察していく問題でした。(3)までは類題を解いた経験がある受験生が多かったかと思われます。(4)は与えられた条件から、ある図形を見いだせたかどうかが得点差につながったと思われます。
3 座標平面と格子点
(都合により省略いたします)
4 平面図形
四角形の対角線の交点同士を結んだ線分に対する定理についての問題でした。2020年から2023年まで続いていた、誘導に沿って解き進めていく出題形式でした。(3)は定理が成立する条件をすべて選ぶ必要があり、根拠が見い出しづらく、自信を持って答えられた人は多くなかったと思われます。
5 空間図形
立体上の2点を結んだときにできる直線に関する問題でした。(1)(2)は確実に正解したい問題です。(3)も(1)(2)と同様に適切な平面図形に注目できれば複雑な計算は必要ないため、完答を目指せる大問でした。
年 | 計算問題 | 整数 | 作図 | 証明 | 文章題 | 円 | 平面図形 | 関数 | 二次関数 | 場合の数 | 確率 | データの活用 | 空間図形 | 球 |
2025年 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||||
2024年 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |||||||
2023年 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |||||||
2022年 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||||
2021年 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
国語

1 山極寿一『森の声、ゴリラの目』
これからの自然観のあり方について、欧米と日本の伝統的な考え方の違いを整理しながら説明した文章でした。文化人類学は頻出のテーマですが、今回の文章は多くのトピックが含まれていたこと、そして年々論説文の文章量が増えていることから、受験生が正確に理解するには高度な読解力が必要とされました。設問は例年通り記号選択がほとんどで、内容理解に関する1行の選択肢が中心の構成でした。漢字の書き取りと読み取りは標準的な難度で、できるだけ失点を避けたいところです。
2 滝口悠生『音楽』
現在の視点だけではなく、登場人物の半生について職業選択にまつわるできごとを中心に回想した文章でした。文章の長さは3ページ弱で例年と比べて短く、登場人物が少ないため比較的短時間で読み解くことができる内容でした。口語文法の識別問題が2年ぶりに復活したほか、副詞、四字熟語、慣用表現の知識について幅広く問われましたが、いずれも標準的な難度でした。また、苦手とする受験生が多い文章表現の効果に関する問題は、近年解きやすくなっているために確実に得点できるように対策が必要です。
3 『古今著聞集』
鎌倉時代の説話集からの出題で、「大般若」という仏典の書写にまつわる出来事について筆者が意見を述べる文章でした。文章の長さは例年並みです。例年出されていた古文単語の意味を答える記号選択はなかったものの、古文単語や古典文法の理解が直接答えの根拠となる設問が一定数出ています。過去には漢文の知識が問われたこともあり、全般的に古文の総合力を高めて入試に臨む必要があります。
年 | 文章1 | 文章2 | 文章3 | 文章4 |
2025年 | 山極寿一『森の声、ゴリラの目』 | 滝口悠生『音楽』 | 『古今著聞集』 | - |
2024年 | 市橋伯一の文章 | 川上弘美『真面目な二人』 | 『十訓抄』 | - |
2023年 | 菊池暁『民俗学入門』 | 乗代雄介の文章 | 『一休ばなし』 | - |
2022年 | 宇野重規『〈私〉時代のデモクラシー』 | 池澤夏樹『スティル・ライフ』 | 『花月草紙』 | - |
2021年 | 全卓樹『銀河の片隅で科学夜話』 | 江國香織『晴れた空の下で』 | 『幽明録』 | - |
理科

1 植物(生物)
植物に関する総合問題でした。やや細かな知識を含んでいるものの、国立大附属校の入試では頻出する内容で、類題の演習経験があれば解きやすく感じたことでしょう。
2 仕事、運動とエネルギー(物理)
基礎的な問題に加え、やや見慣れない実験やグラフを扱った大問でした。近年、国立大附属校の入試で出題が増えている内容です。
3 天体(地学)
天体について幅広く理解度を確認する問題でした。丁寧な処理を要する計算問題も出され、高い思考力が求められました。
4 気体(化学)
気体の性質に関する基礎から発展レベルの問題でした。(4)は与えられる情報をもとに、検証を進めながら解き進める形式で、思考力が求められる内容でした。
5 天気、岩石(地学)
天気や地質について、見慣れない形式を含んだ問題でした。内容は基礎的なものなので落ち着いて対応したいところです。
6 動物、人体、生殖(生物)
動物や人体、生殖に関する知識を確認する問題でした。基礎的な内容が中心なので失点は避けたいところです。
7 電流(物理)
電流と水の温度上昇の実験に関して、会話文の内容をもとに計算を進める形式の問題でした。難度は基礎レベルです。
8 化学変化(化学)
酸化銅の還元に関する問題でした。過不足のある反応に関する計算問題の習熟度によって差がつく内容だったと言えます。
年 | 物理分野 | 化学分野 | 生物分野 | 地学分野 |
2025年 | 仕事、運動とエネルギー、電流 | 気体、化学変化 | 植物、動物、人体、生殖 | 天体、天気、岩石 |
2024年 | 電流、磁界、力、運動 | 物質の特徴、中和、イオン | 生態系、植物、人体、微生物 | 火山、地層、天気、天体 |
2023年 | 電流、運動とエネルギー、力 | 化学変化、物質の特徴 | 動物、顕微鏡、生殖、植物、遺伝 | 地震、火山、天体、天気 |
2022年 | 電流、磁界、運動とエネルギー | 化学電池、気体、物質の特徴 | 植物、動物、人体 | 天気、天体、岩石、火山 |
2021年 | 電流、力、水圧 | 化学変化、物質の特徴、イオン | 人体、植物 | 天気、火山、地質 |
社会

1 歴史総合
古代から近代にかけての諸資料と解説を題材とした問題でした。資料は文章や図・グラフなど多岐にわたり、資料に対応する年代を判断できたかどうかが鍵となりました。
2 歴史総合
古代から現代にかけての人間の移動を題材とした問題でした。小問数は少ないものの、問われている視点が細かいものも含まれていたため、慎重に対処する必要がありました。
3 地理・歴史総合
地図の歴史を題材とした地理・歴史の総合問題でした。古代文明など、歴史的事象への理解に加えて、文章に関連する地域のおおよその緯度・経度を把握しておく必要がありました。そのため、主要な緯度・経度を軸として世界地図がイメージできなかった受験生にとっては難しく感じるものもありました。
4 日本地理
内陸県に関する問題でした。すべての内陸県を把握していることが前提で、そのうえでかつ正確な地図の読み取りや、統計においてポイントとなる数値を的確に読み取る必要がありました。
5 政治総合
新聞記事を題材とした問題でした。他の学校の入試問題では出題頻度が高くないものがいくつか出題されていたため、難しく感じた受験生もいたと思われます。
6 経済総合
ある人物を紹介する文章を題材とした問題でした。資料や選択肢を慎重に読み取らなければならないものもありましたが、他の高校の入試問題でも頻出のものが主だったため、確実に得点したい大問でした。
年 | 日本地理 | 世界地理 | 日本史 | 世界史 | 政治 | 経済 |
2025年 | 日本地理総合 | 経緯度・地形 | 古代~近代 | 古代~現代 | 地方自治・人権 | 企業・金融 |
2024年 | 近畿地方 | アフリカの地誌 | 古代~現代 | 近代~現代 | 選挙・政党 | 環境問題・消費 |
2023年 | 九州地方 | 世界地理総合 | 古代~現代 | 古代~現代 | 人権・三権・国際社会 | 環境問題・企業 |
2022年 | 近畿地方 | 世界地理総合 | 古代~現代 | 古代~近代 | 人権・地方自治・内閣 | 経済総合 |
2021年 | 日本地理総合 | 世界地理総合 | 古代~近代 | 古代~現代 | 憲法・地方自治・法律 | 金融 |