【模試受験後の手引き】解き直しで学習効果を高めよう
学習アドバイス
模試はただ受けるだけではなく、その結果を生かすことが大切です。ここではSAPIX中学部の公開模試を例に、教科別の解き直しのコツや、模試の成績表の活用方法をご紹介します。
解き直し実践編
解き直しの意義とは?
模試を受験するメリットは何でしょうか? その一つは、学習到達度をチェックできること、そしてもう一つは、間違えた問題を分析し、自分の弱点を補強できるということです。
そのために重要なのが「解き直し」です。解き直しをすることによって、その時点での学力を客観的に把握することができます。志望校に合格するためには、今後どのような学習が必要で、何を補強しなければならないか。それを明確にするために欠かせないのが、解き直しなのです。
こうして自分の穴を埋めるためにやらなければならないことをはっきりさせたら、次は中長期的な視野で学習計画を作成しましょう。
解き直しで自分の弱点を把握する
解き直しは、なるべく模試を受けた当日にするようにしましょう。設問に対して自分がどうアプローチをしたか、その感覚が残っているうちに取り組んだ方が効果的だからです。
間違えた問題を「よくあるミスだ」とか「今回はたまたま間違えただけ」と放置してはいけません。解けなかった問題としっかり向き合い、「自分はこういうミスをする傾向がある」と自覚することが重要です。そうすれば、「この前は同じような問題をこう間違えたから、今度は気を付けよう」と意識できるようになります。
模試の結果については、どれだけ正答できたかよりも、どれだけ解けなかったかの方が重要です。どの問題を、なぜ間違えたのか。改善すべき点を明確にして、点数を上乗せするために何をしなければならないのかをあぶり出す。解き直しにはそんな心構えで臨みましょう。
解き直しのコツと対策
解き直しをする際には、なぜ解けなかったのかを分析し、何を改善するべきかを明らかにしましょう。いきなり解説を読むのではなく、まずはもう一度自分の力でじっくり解いてみて、どこでつまずいたのかをはっきりさせることをお勧めします。その上で、つまずいたところの解説と自分が考えた過程を照らし合わせて、どうして解けなかったのか、どのような力が足りなかったのかを把握します。計算間違いなどのケアレスミス、知識不足、考え方の理解不足、時間配分ミスなど、さまざまな理由があるはずです。
このようにしてあぶりだされた弱点を補強する上で有効な方法の一つが、自分専用の解き直しノートを作り、繰り返し見返すこと。このノートはただ正答を書き写すだけでは意味がありません。覚えなければいけないこと、注意しなければいけないこと、自分がつまずきやすいポイントなどをノートにまとめます。そのノートを繰り返し見返して、苦手な部分を克服していきましょう。
教科別 解き直しのコツ
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英語
【単語・熟語】
まだ覚えていない単語や熟語はノートにまとめ、「読む」「書く」を繰り返しましょう。反復しながら覚えていくしかないので、普段の生活のなかで、解き直しノートに目を通す時間を作るのがお勧めです。【長文読解】
内容把握問題の選択肢の根拠が本文のどこにあったのか、解説を見ながら把握しましょう。「どの時点でどの選択肢の正誤が判断できたか」を確認することで、本文を読みながら解く力が養われ、試験時間を効率的に使えるようになります。また、意味を理解できなかった英文は、文構造を理解した上で、何度も音読することが有効です。長い文はスラッシュリーディングをしましょう。区切りで一呼吸置きながらの音読を繰り返せば速読力も培われます。【学年別の注意点】
中1生は、まだつづりを覚えていない単語も多くあるはずです。解き直しでは、書けなかった単語を書いて覚えましょう。読めない単語も、辞書を利用するなどして、正しい発音を身に付けるようにしましょう。中2生は、習った文法単元が増えているので、自分が苦手な単元を見極めることが大切。間違いが多い単元は重点的に復習しましょう。
中3生は、リスニング音源を解説のスクリプトと照らし合わせながら何度も聴きましょう。慣れてきたら、音源を聴き、スクリプトを見ながら声に出して読み、さらにスクリプトを見ずに、音源を追いかけて発音するシャドーイングを行うと効果的です
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数学
解き直しは、間違えた問題を次回は解けるようにするために行うものです。例えば、解説をヒントのように活用する方法があります。まずは解説を見ずにもう一度解き、手が止まった時点で解説を見て、「その場面でやるべきこと」のみを確認する。それが終わったら、再度解き直しを進め、手が止まったら解説で確認する。この作業を繰り返せば、自分がどこでつまずいているかが明確になります。
また、時間を置いてから今度は自力で解けるか再挑戦し、解く過程を自分で再現できるようになるまで、何度も繰り返しましょう。
数学はいろいろな解法が考えられるので、正解だったとしても、その解法がベストだったとは限りません。正解した問題の解説もしっかり読み、より効率的な解法がなかったかどうかも確認しましょう。解説の解法でも解き直しをすると、学習効果がより高まります。
特に中1・2のうちは、計算ミスの癖を中3に持ち越さないためにも、計算問題の解き直しを徹底してください。
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国語
【漢字・語彙】
漢字や語彙などの知識事項は、きちんと覚えるところまでが解き直しです。語句の書き・読み、意味、例文、対義語や類義語などをノートに書き入れましょう。語句は色ペンで大きめの字で書くと見やすくなります。書くときには、誤字・脱字に十分に気を付けてください。【読解】
文章を何度も読み返し、キーワードや筆者の主張部分に線を引きましょう。そして設問文を読み返した後、解説を熟読して、どこがポイントだったのかをつかんでください。読解の解き直しで重要なのは「解法」を意識すること。解説では解法が明示されているはずなので、答えが何かというよりも、どう解くのかに注目して、読解問題全般に通底する解法を身に付けましょう。【学年別の注意点】
中1生は語彙の増強が第一です。知識事項の解き直しに力を入れましょう。中2生は読解力を高めるため、文章の内容がしっかり理解できていたかを確認すること。200字程度の要約を書くのが有効です。各大問の解説の冒頭に「本文の概要」という要約文があるので、自分が書いたものと比べてみて理解度をチェックしましょう。
中3生は「1点でも多く取る」という意識を持って、解法をしっかり定着させ、日々の学習のなかで実践していきましょう。
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理科・社会
理科と社会は英数国と比べて、なぜ正解できなかったのが分かりやすい教科です。知識が足りなかったのか、項目に対する理解が足りなかったのか、間違えた要因をきちんと分析して穴を埋めていくことで、成績の向上が期待できます。
理科では自分の苦手分野を把握し、その分野への対応を優先しましょう。解けなかったパターンとしては、知識不足と、計算力・思考力不足に分けられるはずなので、間違えた理由やポイントを整理したノートを作成し、それを読み返せば学力を底上げできます。
また、解き直しをした後に類題にもチャレンジして、きちんと理解できているかを確認しましょう。理科は分野・単元が明確に分かれているので、テキストなどで類題も見つけやすいはずです。
一方、社会ではまず答案を分析して、間違えた原因を、①知識が不十分だったもの、②知識はあったが資料や統計の中で引き出せなかったもの、③知識はあったが、漢字のミスなどで上手く得点に結び付けられなかったもの、の三種類に大別することで、自分がどの傾向で失点しているのかを意識することが必要です。その上で①の項目に関しては、専用のノートにまとめ、知識を集積していきましょう。②③の失点は、自分では解決しにくいものなので担当の講師などに相談し、アドバイスを書き留めていくと良いでしょう。
社会は分かっているところとそうでないところを区別しやすい一方で、その分、学習の工夫が問われる教科です。自分に足りていない部分を意識し、学力向上につながるノート作りを心掛けてください。
解き直しを実践して成功した先輩たちのエピソードをご紹介!
- 総合成績表の「小問別正答率」を毎回確認していたAさん。「受験者全体の正答率は高いのに自分はミスしてしまった問題」を優先的に解き直すようにしたことで、「正答率の高くなりそうな問題」とそうでない問題を自然と見極められるようになりました。その結果、解く問題の優先順位付けや時間配分が上達。安定した成績を取ることができるようになりました。
- Bさんは、中2まで、返却された自分の採点済み答案を見ることもしていませんでした。「勉強しても成績は上がらない」「問題との相性によるから、成績は運次第」と考えていたのです。当然、成績は上がりませんでした、ある時、初めて公開模試の解き直しをしてみると、多くのケアレスミスをしていることに気付きました。それを意識するようになったことで、Bさんは成績を上げることに成功しました。
成績資料 活用編
成績速報で記憶が新鮮なうちに解き直す
解き直しは、受験時の記憶が新鮮なうちに行うのが最も効果的です。たとえばSAPIXの公開模試では、受験後3日以内にオンライン上のマイページで成績速報が公開され、得点以外にも採点済み答案も確認することができます。
また、成績速報公開後は、志望校登録した学校を自分が実際に取った点数で判定することはもちろん、あと何点取れば合格可能性が上がったかという判定も可能です。この機能を使えば、どの問題は正解すべきだったか、そのためには時間配分をどうすべきだったかといった、受験における「作戦」を振り返ることもできますので、ぜひ、役立てましょう。
総合成績表で今後の勉強方針を立てる
さまざまな視点から自分の立ち位置を確認する
総合成績表を見れば得点・偏差値・順位だけでなく、総合成績・教科別・男女別など、さまざまな視点から他の受験者と比較することが可能です。また、一つの教科の中でも、分野ごと、大問・小問ごとの正答率も見ることができるため、客観的な視点から自分の立ち位置を確認できます。教科別の学習アドバイスも付いているので参考にして、今後の勉強の方針を立てましょう。
成績を向上させるには偏差値を基準としましょう。偏差値とは、他の受験者と自分を比較し、数値化したものだからです。偏差値が上がればそれだけ、志望校合格の可能性も高めることができます。「自分の弱点は分かったけれども、どれから優先して克服すれば良いか分からない……」という人は、問題ごとの全体正答率に着目しましょう。もしあなたが全体正答率の高い問題を間違えてしまったとしたら、他の受験者はできていた問題をミスしてしまったということですので、周囲との差が生じて偏差値は下がります。一方で全体正答率の低い問題を間違えてしまっても、他の受験者もあまりできていないので、周囲との差は少なく、偏差値に大きな影響は出ません。 よって、間違えてしまった問題のうち全体正答率がより高いものを優先的に解き直していけば、効率良く成績を上げることができるでしょう。
SAPIXの偏差値の特長
難関校の合格ラインが細かく明確に分かる
一般的な模試で算出される偏差値に比べて、SAPIXの偏差値は10から20程度低く出ます。例えば、開成高の合格ラインは、一般的には偏差値78前後とされていますが、SAPIXの偏差値では64。これは学力の高い層がSAPIXの模試を受験するためです。
一般的な模試では、学力の高い生徒がグラフ右側に偏ってしまい、難関高校の偏差値の差が出にくくなりますが、SAPIXの模試では、母集団自体のレベルが高いことにより、偏差値の差が明確になります[下図参照]。
継続的に受験してより正確に分析する
継続して模試を受験すると、データが蓄積されていき、自分の成績の推移が分かります。それを確認すれば、得意・不得意分野や教科ごとの得点バランスなどを調べることができます。自分の得意・不得意分野などをしっかりと把握し、より効率良く成績をアップさせましょう。
SAPIX中学部では、年間を通して各種公開模試を実施しています。ラインナップやお申し込みなどの詳細は、以下からご覧ください。