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【学院長インタビュー】早稲田大学本庄高等学院の魅力

インタビュー

早稲田大学本庄高等学院 学院長 半田 亨先生 早稲田大学本庄高等学院 学院長 半田 亨先生

幅広く学んで教養を身に付け 早稲田大学の中核を担う人材に

早稲田大学本庄高等学院は1982年、早稲田大学の創立100周年を記念して埼玉県本庄市に設立されました。当初は男子校でしたが、2007年に男女共学に移行し、現在、同大学唯一の共学附属校となっています。先進的な教育に取り組む同校の特長や課外活動のプログラムなどについて、学院長の半田亨先生に伺いました。

大学受験にとらわれない広く深い学びを実現する授業

――御校には卒業基準を満たしさえすれば、その全員が早稲田大学に内部進学できる推薦枠がありますね。

半田 例年、卒業生のほぼ100%が早稲田大学に進学していますが、医歯薬系学部や東京大学などを目指して外部受験をする学院生もいます。2020年9月には日本医科大学と高大接続連携に関する協定を締結し、2022年3月卒業生から原則として毎年2人ずつ同大学に推薦入学できる道が開けました。早稲田大学に加えて、医学部医学科に進むルートが整備されたことは、近年では最も特筆すべき出来事といえるでしょう。

――教育全般についてはどのような特色があるのでしょうか。

半田 まず強調しておきたいのは授業ですね。いわゆる進学校では、必修科目を履修した後、受験に特化した授業を選択するのが一般的です。しかし、学院生は原則として大学受験をしないので、全ての科目を一通り学びます。その上で、高3では自分の進路を見据えて必要な科目を選択するカリキュラムになっています。

例えば、ロシアによるウクライナ侵略に関するニュースも、世界史や地理を学習していないと理解できないことが多いですよね。しかし、ウクライナやロシアの概略を学んでいれば、侵略の歴史的な背景や、「ウクライナは穀物資源が豊かな国なのに、なぜ小麦粉の価格が高くなったのか。やはり侵略のせいだ」といったことも分かるでしょう。学院生には幅広い教養を身に付けて、健全な批判精神を養ってもらいたいと考えています。

その一方で、マニアックな授業もあります。一例を挙げると、数学の選択授業は偏微分や重積分など、大学の学びに踏み込んだ内容になっています。私が担当している高1の情報の授業では、統計を処理する際に「R」という統計解析ソフトを使っていますが、「R」を導入している高校はまだ少ないのではないでしょうか。

――半田先生はもともと情報科の教員だったのでしょうか。

半田 早稲田大学を卒業後、数学科の教員として本学院に赴任しましたが、2002年に学習指導要領が改訂され、新たに情報科ができたため、免許を取得して情報科に移りました。今年は卒業論文でAIを作ろうとしている学院生もいるので、私もまだまだ勉強しなければなりません。

――話題のChatGPTを高校教育に導入することについてはどのようにお考えですか。

半田 情報科の教員としては、基本的にネット上にあるものは資源と同じだと考えています。利用するのは構いませんが、丸写しは駄目。ChatGPTはネット上の文章を集めてリクエストに答えていくため、著作権の問題が生じる可能性がありますし、人が作ったものを自分の名前で提出することに違和感を覚えないのも問題だと思います。

AIが生成したものをそのまま丸ごと使うと、それを利用してまたAIが文章を生成するため、新しい成果物が増えなくなり、人間としての進歩はそこで終わってしまいかねません。AIが作ったものを自分なりにカスタマイズして、“自分の味”を一味入れる努力ができるかどうかに、これからの人間社会の発展がかかっているのではないかと思います。

「自ら学び、自ら問う」姿勢を地域や大学などとの連携教育でも培う

――課外活動にも力を入れているとお聞きしています。

半田 地域や企業、大学などと連携し、多彩な課外活動を実施しています。

まず、地域や企業と連携した活動としては、学院生が小学校に講師として赴いたり、地元の農産物の販売に協力するために、JAと連携して直売所のポスターやポップ作りに取り組んだりしています。また、2年ほど前から、地域FM局「ほんじょうFM」の番組パーソナリティーを本学院の生徒が務めています。最寄りの上越新幹線・本庄早稲田駅のイベントのプロデュースも手がけており、昨年は上越新幹線開業40周年記念式典をコーディネートしました。今年は来年3月に控えた駅の開業20周年記念式典のイベントを企画しています。

――地域に根差した多彩な活動が行われているのですね。メンバーはどのように募集しているのですか。

半田 プログラムごとに募集をかけています。部活動の合間に参加する学院生も、自分の卒業論文のテーマに関連するので体験してみようという学院生もいて、参加する動機は十人十色のようです。

――早稲田大学と連携した活動にはどのようなものがありますか。

半田 2021年から大学のアントレプレナーシップセンターと連携して、アントレプレナーシップ教育を積極的に進めています。日本では一般的に「起業家教育」と解釈されますが、本来の目的は難問を解決する方策をデザインする、“デザイン思考”を身に付けることです。本学院ではスタンフォード大学から講師を招いて、英語によるデザイン思考のワークショップも行い、アントレ教育を推進しています。昨年は早稲田大学で開催されたコンテストに参加したのですが、学院生チームが表彰されました。

――「自ら学び、自ら問う」という御校の教育方針にも通じるプログラムですね。

半田 卒業論文を軸とした長期にわたる探究活動も本学院の大きな特色です。大学に進んで以降のアドバンテージになるよう、3年間を通してレポートや論文を書いたり、プレゼンテーションをしたりする機会を数多く設定し、論述する力と成果を分かりやすく人に伝える力を鍛えています。その集大成として、高2の後半から高3の12月にかけて、自ら決めたテーマで卒業論文をまとめるのですが、優れた内容のものは積極的に外部のコンテストに応募することを奨励しています。オランダの英文の専門誌や査読付きの論文誌に掲載された論文もあり、高校生・高専生を対象にした科学技術の自由研究コンテスト「JSEC(Japan Science & Engineering Challenge)」での入賞も果たしています。

ところで、本学院では国際交流も重視しています。かつてはさまざまなプログラムがあったのですが、コロナ禍ですっかりできなくなりました。ここにきてようやく以前のような状況に戻りつつあり、10月にはタイやシンガポールの交流校の生徒が来校しました。

「自由と自立」の校風の下、役割に応じたリーダーシップを育む

――御校はどんな校風の学校なのでしょうか。

半田 本学院は早稲田大学の「自由と自立」の伝統を受け継いでおり、校則はほとんどありません。服装に関する規定もたった一つで、「高校生として学校生活にふさわしいものであること」です。髪を染めたり、ネイルやピアスをしたりすることも禁止していません。「なぜ駄目なのかと問われた際、合理的な理由が回答できないような決まりで生徒をしばるのはおかしい」というのが、本学院の考え方です。学院生は3年間、自由な環境で自己表現をしながら進むべき道を見定め、大学に進学していきます。

――学院生にはその3年間をどんなふうに過ごしてほしいとお考えですか。

半田 大学入学後、「この学部・学科は自分がやりたいことを学ぶところではなかった」と思ってしまうのが一番残念なことです。それだけに、本学院でいろいろなことにトライし、自分の視野と可能性を広げてほしいですね。ミスマッチが生じない学部選択指導をするよう、大学からも強く要望されています。

人生は必ずしも自分の望むようになるとは限りません。将来、どんな方向に進んだとしても、その世界でやっていけるフレキシビリティーも養ってほしいと願っています。ですから、先ほどお話ししたような幅広い学習や、多彩なプログラムに挑戦するチャンスを用意するのも学校の務めだと考えています。

「卓越したプログラミング技術を身に付けている」「英語が堪能」といった得意分野を深掘りしている学院生もいます。しかし、基本的には視野を広げていろいろな方向を知らないと、自分がどの分野に進むべきかという判断を客観的に行うのは難しいでしょう。

――ミスマッチをなくして、早稲田大学の中核的存在として活躍することが期待されているのですね。

半田 実際、本学院の卒業生は一般の受験生に比べて大学院への進学率が高く、大学で学びを深めている者が多いようです。ただ、私個人としては、大学時代だけではなく、人生という長いスパンでの活躍を見届けたいという思いがあります。たとえ大学での成績が悪くて留年を繰り返してしまったとしても、社会に出てから企業や地域で活躍したり、未開の地を活性化させたりするような人もいるはずです。学院生たちの生活力や生命力は非常に強いと感じています。

――そんなふうに活躍するためには、やはり日本や世界をけん引するような強いリーダーシップが必要になるのでしょうか。

半田 必ずしもそれだけではないと思います。もし、コンサート会場や野球場で大地震やテロが起きてしまったら、きっと人々はパニック状態になって出口に殺到するでしょう。しかし、そのときに誰かが一言、「みんな、冷静になろう!」と言えば、死者が圧倒的に減るというデータがあります。

一口にリーダーシップといっても多種多様ですが、そうした一言を発することができる、小さなリーダーシップを発揮できる人間になってほしいと考えています。その上で、あるソサエティーをうまく統率していくリーダーシップや、大勢が協力して問題に当たる場合の役割に応じたリーダーシップなど、さまざまなリーダーシップを使い分けられる人になってもらいたいですね。

能動的に行動できる力が高校生活を有意義にする鍵に

――御校の入試は「一般」「帰国生」「α選抜」「I選抜」など、メニューが豊富です。国内外に広く門戸を開いていることがよく分かります。

半田 「自由と多様性」を尊重する本学院では、さまざまな生徒が共に日々の学校生活を送ることで、学院内に化学反応を起こしてほしいと願っています。一般生が帰国生や現地校出身のクラスメートの英語でのプレゼンテーションを聞いて目標にするなど、互いに刺激を与え合い、得意なことを教え合う場面もよく見られます。

――入学後の学習サポートはどのようになっているのでしょうか。

半田 教科によっては補講や追試を行っている他、質問に来ればしっかり対応します。とはいえ、受験を重視する学校のような積極的かつ手厚いフォローは行っていないので、学習支援に関しては冷たいと感じられるかもしれません。これは他のプログラムにも共通するのですが、本学院は自分から求めないと学校生活がつまらないものになると思います。逆に、自ら求めればいろいろなことが体験できるので、充実した毎日が送れるでしょう。

――貴重な3年間を楽しくするのも、つまらなくするのも自分次第なのですね。

半田 はい。そうした傾向は他校に比べて強いと思います。私がかつて早稲田大学の学生だった頃、先輩から「早稲田には『行列を見たら並べ』という言葉がある」と教えてもらいました。並べば良いこともあるが、並ばなければ何も得られないというわけです。本学院もそのスタンスは同じです。

――とにかく一歩踏み出すのが大事ということですね。そうした積極性に男女の違いはありますか。

半田 女子の方が積極的ですね。海外プログラムへの応募率は9対1の割合で圧倒的に女子が多いです。今年7月のシンガポール研修は10人全員が女子で、2月のタイ研修も男子は1人だけでした。男子は団体競技の部活動が女子より多いので、休みづらいということも背景にあるようですが。

――御校は男子校から共学化しましたが、現在の学院生の男女比はどれくらいでしょうか。

半田 現高1は6対5で男子が多く、高2は半々です。そもそも入試の募集定員に男女差があるので、男子の方が少し多いのが実情です。これは女子が多数になると内部進学の文系枠が不足するという問題が出てくるためです。議論はしているものの、男女別定員の撤廃にはなかなか踏み切れません。女子の団体スポーツの部活が少ないので、それを増やしていくことも今後の課題の一つです。

――三つある理工学部に進学する女子はやはり少ないのでしょうか。

半田 当初は理系志向でも法学部や政治経済学部などの文系に変更するケースが多いですね。政治経済学部は早稲田大学の看板学部の一つなので、就職を考えてということもあるでしょう。また、理工学部は学科が細分化されていて、各学科の枠が2~3人です。そのため、自分が進みたい学科にすんなり入れるとは限らないというのも理由の一つかもしれません。

「α選抜」「I選抜」とは?

「α選抜」は自己推薦入試です。スポーツや文化、芸術、語学、学問などの分野で大きな成果を上げた「プラスアルファの何か」を有する生徒を受け入れる目的で設けられました。一方、「I選抜」は帰国生のための自己推薦入試で、日頃の学業成績と英語力、基礎学力試験、面接の結果を総合的に評価して選抜します。どちらも早大本庄学院への入学を第一志望として、合格した場合は入学を確約できることが出願の条件です。

快適な生徒寮を男女別に完備 豊かな環境で伸びやかな3年間を

――男女別に生徒寮があるのも御校の強みですね。

半田 男子専用の「早苗寮」と女子専用の「梓寮」があり、海外も含めて遠方からの入学希望に対応できます。通学圏内に自宅があっても、「部活動に注力したい」「通学時間の無駄を省きたい」「親元から離れて自立心を養いたい」といった理由で、寮を利用している学院生もいます。

――ジェンダー平等に関する取り組みも積極的に進めていると伺っています。

半田 教員が学院生の呼び方を男女で変えないというルールを設けたり、宿泊行事の際にも部屋などをできるだけ希望に沿うようにしたりしています。また、校舎の各フロアにジェンダーフリーのトイレを設置しています。

学校説明会や見学会に行ったときは、その学校のトイレを必ずチェックすることをお勧めします。学校選びではあまり注目されませんが、教室やホールと違ってお金をかけずに済む場所だからこそ、結構大事な要素なのではないかと考えています。

 

――最後に、受験生と保護者の方にメッセージをお願いします。

半田 ぜひ一度、本学院に足を運んでください。稲稜祭(文化祭)や学院説明会であれば生徒の様子が分かりますが、それが難しいなら休日に見学に来るだけでも構いません。自然に囲まれた広大なキャンパスには、サッカー場、野球場、陸上競技場・ラグビー場、テニスコートなど、各種目専用のグラウンドがあり、伸び伸びと高校生活を送ることができる環境が整っています。その半面、アクセスが良好とはいえないことも確かです。通学に要する時間や身体的な負担なども体感した上で、志望校として検討していただければと思います。

――本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

早稲田大学本庄高等学院 基本情報

【所在地】
〒367-0032 埼玉県本庄市栗崎239-3
【TEL】
0495-21-2400
【アクセス】
在来線:JR高崎線本庄駅下車→南口からタクシーで5分、徒歩30分
バスの場合は本庄駅南口から寄居行で「栗崎」下車、徒歩10分
新幹線:北陸・上越新幹線本庄早稲田駅下車→南口から徒歩10分

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