灘高等学校 2023年出題傾向リサーチ
出題傾向リサーチ
英語
1 説明文の読解(約850語):小問数8
人が持つ固有性についての説明文です。全体を通して、ヒントを的確に捉えて解答を導く高い分析力が求められています。下線の引かれた文を本文中の1語に換言する問8では、内容把握、似た文構造に注目する読解のスキル、接頭辞を含む語句知識が同時に問われていて、英語の総合的な力が特に必要です。
2 リスニング問題:小問数5
例年通り、問題用紙に書かれた放送内容に関する質問に対して、正しいものを選ぶ形式です。
3 適語選択:小問数5
英文の空所に入れるのに最も適切なものを選ぶ問題です。難度は標準レベルでした。
4 エッセイの読解(約570語):小問数15
「子どもは自分の行動が見られていることに無自覚である」というテーマのエッセイです。語順の転倒といった、難解な構造を持つ文が多く出てきます。本文中の空所に入る動詞を選び、適切な形に変えて答える問4は難問でした。
5 正誤:小問数3
与えられた英文の誤っている部分を選んで答える問題です。語法や時制が問われています。
6 物語文の読解(約460語):小問数8
看護師になった男性についての物語文です。ある単語の意外な用法が問われた問1や、解答が絞りにくい問5などで差がついたと思われます。
7 和文英訳:小問数4
与えられた日本文の下線部を英訳する問題です。修飾語の訳しもれに注意が必要です。
8 自由英作文:小問数1
英語で書かれた2行の詩を読み、作者が込めた思いを読み取って記述するという新しい傾向の出題形式です。「自由に」書くように指示があり、戸惑った受験生も多かったと思われますが、「決まった正解はない」と割りきれたかどうかがポイントです。
数学
1 小問集合
(1)平方根を含む計算、(2)整数、(3)カードの確率、(4)平面図形の4問でした。(3)が小問にしては設定がやや複雑ではありましたが、この大問全体としては例年より取り組みやすい難度でした。
2 二次関数
放物線と直線の交点でできる図形について考える問題でした。(1)、(2)(a)は苦労せずに解答できたことでしょう。(2)(b)は類題を解いたことはあったと思われます。その経験を元に完答を目指したいところです。
3 確率
等しい確率で経路の進行方向を決定する問題でした。(1)は典型的な問題です。(2)は考え方はそれほど複雑ではありませんが、ミスが起きやすく、慎重に処理することが重要でした。
4 文章題
一本道を二人が往復する設定の文章題でした。灘高の受験生であれば取り組んだことのある設定だったはずです。(1)、(2)共に自信を持って解答したいところです。
5 平面図形と円
正方形の内部に正多角形を重ねる設定の問題でした。解答に至るまでの作業量がやや多いので、ミスをしない慎重さが求められます。各小問の流れをくみ取ることができれば高得点を狙えた大問です。
6 空間図形
立方体を切断した断面図の面積について考える問題でした。難しい発想は求められていませんが、この大問も計算が複雑になるため、正確さが重要でした。
国語
1 若松英輔『沈黙のちから』
短歌を例として、「言葉」について述べられた文章でした。2022年より文章量が少なくなりましたが、見慣れない表現も含まれていたため、読解に時間を取られてしまった受験生も多くいたと思われます。設問は字数制限のない記述が中心で、筆者独自の言い回しを換言するものについては、筆者がどのような意味を表現したいのかを理解しておく必要がありました。ほかにも、字数制限のある記述1問、漢字の書き取り3問が出されています。
2 アーサー・ビナードの文章
アメリカ出身で日本在住の詩人による、「星座」について述べられた随筆文でした。受験生になじみのある具体例が用いられていて、文章量も例年通りでほかの高校に比べて多くないので、読解に時間はかかりません。設問は漢字の書き取り6問以外はすべて字数制限のない記述です。漢字はいずれも標準的な難度だったので、確実に得点したいところです。記述は単に説明や理由をまとめるのではなく「解答欄に合わせて」といった細かな設問の指示にしたがって、注意深く的確に解答したいものでした。
3 『宇治拾遺物語』
「金」を見つけた主人公の行動について書かれた鎌倉時代の説話集からの出題でした。2022年より文章量が増え、意味を掴むのに時間がかかります。古文単語の細かな知識を問うものはなく、例年通り読解問題が中心です。記号選択、抜き出し、字数制限のない記述など幅広い形式の設問に対応する必要がありました。これまで学習してきた古典文法の知識をふまえて、文章の内容を正確に掴むことができたかどうかで点差がついたと思われます。
理科
1 運動とエネルギー(物理)
ばねの弾性力による力学的エネルギーを計算し、おもりの運動を分析する問題です。高校の物理基礎で学習する内容ですが、問題文から計算方法を読み取る形式での出題です。過去の入試で類題が出されているため、演習経験の有無で差がついたと思われます。
2 植物、生態系(生物)
海中に生える種子植物であるアマモと海の生態系についての問題です。アマモの生態に関連する記述問題が多く、ほとんどの受験生にとって初めて見る題材であるため、状況を推測して答えるしかなかったと考えられます。
3 電流(物理)
抵抗線を立体的に組み合わせた回路についての計算問題です。問2までは、類題を解いたことがある受験生であれば、問題文の誘導を正しく読み取ることで解答できます。問3はほかの高校で出題例がありますが、電流のしくみについての深い理解が必要です。見慣れない図や細かい設定によるケアレスミスにも注意が必要です。
4 天気(地学)
フェーン現象についての問題です。難関校では頻出の形式ですが、条件が追加されていることに注意する必要がありました。全体的に解きやすく、高得点の受験生が多かったと思われます。
5 化学電池(化学)
化学電池のしくみをもとに、電圧やイオンの動きについて分析する問題です。問4までは基礎的な問題で、出題例も多いので、失点は避けたいところです。問6、問7はなじみの薄い装置での実験で、イオンの動き方を詳しく分析する力が必要でした。