【東京都】都立高校入試の仕組みと対策
入試制度解説
こちらのページでは東京都立高校入試の仕組みや、その受検生に向けたSAPIX講師からのアドバイスなどをご紹介します。
- 本記事は2024年6月10日時点の情報を基に作成しています。最新の情報は必ず東京都教育委員会のページをご確認ください
目次
都立高校入試の種類
「推薦に基づく選抜」と「学力検査に基づく選抜」の二種類に大きく分けることができます。
推薦に基づく選抜は、さらに「一般推薦」と「文化・スポーツ等特別推薦」「理数等特別推薦」とに分けられますが、後者の特別推薦は限定された実施校や募集人員でのみ行われるものです。
また、学力検査に基づく選抜には、第一次募集での欠員を補充するための「第二次募集」や、定員を分割することで入試日程を前期・後期に分ける「分割募集」という形態もありますが、こちらも限られた学校でのみ実施されます。
- 本記事では以下、推薦に基づく選抜のうち一般推薦のことを「推薦入試」、学力検査に基づく選抜のうち、第一次募集および分割前期募集のことをまとめて「一般入試」と呼称します
なお、推薦入試で残念ながら不合格となった場合でも、一般入試で同じ高校に再チャレンジすることも可能です。推薦入試での不合格が、一般入試の合否判断で不利に働くということはありません。
- 都立高校に推薦入試で合格した場合、国立大附属高校や私立高校に進学したり、他の都立高校の一般入試を受験したりすることはできません
入試の流れ
STEP1 入試案内等の確認
東京都教育委員会のホームページで、例年5・6月ごろに入試日程が、10月ごろに各都立高校の募集人員等の入試案内が発表されます。
STEP2 志願者情報等入力
志願する都立高校専用のインターネット上の出願サイトに登録し、必要な情報を入力してから中学校の承認を受けてください。承認を受けると受験料の支払が可能になります。
STEP3 出願書類提出
調査書等、出願に必要な書類を中学校から高校に送付すれば出願完了です。
なお、受験票は指定日以降に出願サイトからダウンロードできるので、自身で印刷し検査の際に持参しなければなりません。
- 一般入試においては、規定の期間内に手続を行えば志願変更することが可能です
STEP4 検査
受検する入試の種類、学校によって検査内容が異なることがあります。
- 推薦入試…集団討論・個人面接や小論文または作文など
- 一般入試…学力検査(筆記試験)など
STEP5 合格発表
東京都教育委員会及び各都立高校のウェブサイトからアクセス可能なウェブページから合否の確認が可能です。
【参考】2025年の入試日程
<推薦入試>
- 志願者情報等入力期間:12/20(金)~1/16(木)
- 出願書類提出期間:1/9(金)~1/16(木)
- 検査:1/26(日)・27(月)
- 合格発表:1/31(金)
<一般入試>
- 志願者情報等入力期間:12/20(金)~2/5(水)
- 出願書類提出期間:1/30(木)~2/5(水)
【取下げ】2/12(水)
【再提出】2/13(木) - 検査:2/21(金)
- 合格発表:3/3(月)
内申点の影響と合否判断の基準
「調査書」「内申点」「調査書点」とは
- 「調査書」…中学校から高校に提出される書類のこと。受検生の成績等が記載されています
- 「内申点」…調査書に記載された内容のうち、9教科(英数国理社+実技4科)の成績について得点化した点数の一般的な呼称。中学校では1科目の成績が1~5までの成績で表されるため、これを9科目で掛け合わせた45点が満点です。なお、内申点には中3生のときの成績が使用されます
- 「調査書点」…内申点を入試の合否判断用に換算した点数のこと。推薦入試と一般入試とで、点数のウエイトが大きく異なります
入試の合否判断に用いられる点数の算出方法
推薦入試と一般入試とで、得点の算出のされ方が異なります。
推薦入試の合否判断の基準
調査書点、個人面接/集団討論、小論文/作文などに出願書類の内容が加味されて合否判断が行われます。
学校によりそれぞれの配点などは異なりますが、調査書点の割合は、入試の合否判断に用いられる全ての点数のうち50%までと定められています。ただし、この基準内であれば各学校が自由に割合を設定できます。
なお推薦入試では、内申点が調査書点として扱われるケースが大半です(一部の学校の推薦入試では、各科目における「関心・意欲・態度」や「知識・理解・技能」などについてA・B・Cの三段階で評価した「観点別学習状況の評価」を数値化し、調査書点として扱うこともあります)。
【参考】2024年推薦入試の配点例
- 日比谷高校:調査書点450点(50%)+集団討論・個人面接200点+小論文250点
- 西高校:調査書点360点(40%)+集団討論・個人面接240点+作文300点
- 上記に出願時の提出書類の内容を加味
一般入試の合否判断の基準
学力検査、調査書点、ESAT-J(後述)の点数を総合して合否判断されます。全ての点数のうち調査書点の割合は30%で、各学校ともおよそ統一されています。
以下の表は各判断基準が満点で、調査書点の割合が30%の場合の配点の例です。
学力検査 | 100点×5科=500点 | ➡ 1.4倍 |
700点(A) |
調査書点 | 主要5科:25(5×5科) + 実技4科:40(5×4科×2倍※) ↓ 65 |
➡ 4.6倍 |
300点(B) |
ESAT-J | 20点(A評価) ※評価1段階につき4点差 |
➡ 1.0倍 |
20点(C) |
- 一般入試では、主要5科の成績はそのままの数値で扱われますが、実技4科については成績の数値が2倍になります
700点(A)+300点(B)+20点(C)=1020点満点(合否判断の基準点)
この表から計算すると、
- 主要5科の成績 1ポイント = 学力検査の3.3点
- 実技4科の成績 1ポイント = 学力検査の6.6点
に相当することが分かります。
<都立高校入試の合否に影響>
中学校英語スピーキングテスト「ESAT-J」とは
「ESAT-J(English Speaking Achievement Test for Junior High School Students/イーサットジェイ)」は、英語を「話すこと」の能力を測ることが目的のテストで、一般入試に活用されています。
- 実施時期:例年11月(予備日12月)
- 実施会場:都立学校や民間施設など
- 活用方法:A~Fの6段階で評価し、これを20点~0点の4点刻みで換算して活用
- 出題内容:学習指導要領に準拠
- 試験形式:タブレット端末、イヤホンマイク、防音イヤーマフを使用し、解答音声を録音
SAPIX中学部では授業に英語オンラインレッスン(中3生対象)を取り入れています。こういった英語学習ツールを使うことも有効です。
【SAPIX講師が回答・アドバイス】
都立高校Q&A
都立高校の募集
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推薦入試と一般入試の募集人員に違いはありますか。
推薦入試の募集人員は全体の20%までと決まっています。都立高校(普通科)の大半では推薦入試の募集人員を20%としています。
一般入試では、定員から推薦入試での選抜者を除いた人数が募集されます。
推薦入試は募集人員が少ないため、人気のある学校の倍率は極めて高くなりがちです。例えば、進学指導重点校(普通科)の2024年推薦入試では2.27~3.79倍の高倍率でした。一般入試では1.25~1.81倍であり、相当な開きがあります。
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「男女合同定員」について教えてください。
性別によらずに募集人員が定められる仕組みのことです。
東京都立校には1950年(新制高等学校移行)から既に男女別定員制がありましたが、時代の変化とともに男女別定員制の緩和が検討されるようになり、1998年から緩和措置が実施されました。ただし、緩和措置の実施は校長の判断にゆだねられ、2021年は全日制普通科110校のうち42校が実施していました。
この緩和措置を段階的に拡大していくことが決まり、第一段階として、それまで「約40%の高校」で実施されていた緩和措置を、2022年からは「全ての高校」で実施することにしたのです。そして、第二段階として2023年から男女別定員の緩和の割合を10%から20%に増やし、第三段階として2024年から男女合同定員に完全移行しました。
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住んでいる地域によって受検制限はありますか。
東京都内に在住であれば、市区町村に関わらず、どの都立高校も受験できます。
かつては都内の地域ごとに学区が設けられ、受検できる都立高校が制限されていましたが、2003年以降からはこの制度は撤廃されました。
入試難度を軸にした都立高校の分類
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難関とされている都立高校はどこですか。
東京都には200近くの公立高等学校がありますが、特に難関校といわれる都立高校は、東京都教育委員会から以下のような指定を受けています。
進学指導重点校
進学実績の向上を明確に謳い、教員の配置や予算面で優遇される一方、その実績が厳密に評価・公表されます。5年更新で現在は、日比谷(千代田区)・西(杉並区)・国立(国立市)・八王子東(八王子市)・戸山(新宿区)・青山(渋谷区)・立川(立川市)の7校が指定されています。
進学指導特別推進校
進学指導重点校につづく位置づけの高校。小山台(品川区)・駒場(目黒区)・新宿(新宿区)・町田(町田市)・国分寺(国分寺市)・国際(目黒区)・小松川(江戸川区)の7校が指定されています。
進学指導推進校
進学指導特別推進校に次ぐ進学実績をあげる高校の中から、地域ニーズ・地域バランスを加味して指定されます。現在は、三田(港区)、豊多摩(杉並区)、竹早(文京区)、北園(板橋区)、墨田川(墨田区)、城東(江東区)、武蔵野北(武蔵野市)、小金井北(小金井市)、江北(足立区)、江戸川(江戸川区)、日野台(日野市)、調布北(調布市)、多摩科学技術(小金井市)、上野(台東区)、昭和(昭島市)の15校が指定されています。
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進学指導重点校に入学するメリットはなんでしょうか。
入学時に全生徒が同じスタートラインに立ちながら、大学進学に向けた面倒見の良さや、生徒による授業評価の導入といった授業改善へのたゆまぬ工夫と、優秀な仲間と切磋琢磨できる環境があります。
都立の入試では内申点も重要なファクターとなるため、こうした都立難関校に合格する生徒は、「人の話を聞ける」素直なタイプの生徒が多いともいえます。
また、進学指導重点校には伝統校が多く、各界で活躍する卒業生とのつながりが持てるという点も見逃せないでしょう。
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「自校作成問題」という言葉を聞きますが、何のことですか。
「自校作成問題」とは、その学校が独自に作成した入試問題のことで、共通の学力検査では測ることが難しい、より高度な思考力や表現力を受検生に問うためのものです。その高校がどのような生徒に入学してほしいのかというメッセージが込められているとも言えるでしょう。
現在は進学指導重点校のような難関校で自校作成問題が使われています。なおこれらの高校においても、英語のリスニングテスト※および理科・社会は他の高校と同じ共通問題が使われます。
- 国際高は英語のみリスニング問題を含めて自校作成
自校作成問題を使う高校の受験生は難関国私立校を併願することも少なくありません。それに伴って難度が高くなっているので、合格を目指す場合は対策が必須といえます。
SAPIX中学部では中学2・3年生を対象に、9月より週1回の集中学習で効率的に実力を伸ばせる「SS〈サンデー・サピックス〉特訓」を開講します。中3生向けには都立日比谷高・西高・都立難関校対策に特化したクラスもございますので、ぜひ受講をご検討ください。
入試難度の捉え方
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都立高校の入試では、中学校の教科書レベルを超えた出題はされないと聞いたことがありますが、それでも塾に通う必要はありますか。
都立高校の入試問題は、要求される「知識」の面では確かに学校の教科書がベースとなっています。ただし、教科書=入試問題ではないことに注意が必要です。
例えば、学校の国語の教科書に掲載されている文章は、それが小説や論説のどちらであっても、入試問題のようにあらかじめ傍線が引かれていたり、答えるべき問いが付けられていたりはしません。問題そのものを解く訓練抜きには、学力検査で高い得点を取る実力はなかなか身に付かないのです。
また、「問題の難度」の面から見ても、教科書に掲載されている問題と、実際の入試問題との間には大きな差があります。特に、進学指導重点校の自校作成問題に関しては、求められる知識の量こそ教科書レベルですが、問題の難度は教科書とは異なり、このギャップを埋めるためには特別な対策が必要です。
一例ですが、日比谷高は私立の最難関である開成高や国立の最難関である筑駒高に合格した生徒でも、最終的な進学先を日比谷高にする受験生がいるくらいの人気と難度です。
SAPIXの日比谷高受検者の主な併願校とその割合 男子 女子 学校名 割合 学校名 割合 開成 64% 慶應女子 79% 筑駒 28% 早大本庄学院 50% 筑波大附 35% 青山学院 43% 学芸大附 14% 筑波大附 43% 慶應志木 50% お茶の水女子大附 29% 早大学院 35% 渋谷幕張 29% したがって、そうした最難関校を目指すレベルのライバルとの競争であるという認識のもと、日々の学習に取り組む必要があります。
SAPIX中学部では中学2・3年生を対象に、9月より週1回の集中学習で効率的に実力を伸ばせる「SS〈サンデー・サピックス〉特訓」を開講します。中3生向けには都立日比谷高・西高・都立難関校対策に特化したクラスもございますので、ぜひ受講をご検討ください。
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共通問題である理科・社会にはそれほど注意を払わなくても大丈夫でしょうか。
確かに、理科・社会に関してはすべての都立高校で共通問題が使用されています。ただし、例えば日比谷・西高といった最難関校では、理科・社会の目標点数は9割で、極めて高得点での勝負となります。たった一つのミスが合否に影響しかねないため、油断できません。
ちなみに、先ほどの日比谷・西高の例でいえば、理科・社会で点数を大きく落とした場合には、難度の高い自校作成問題の英語・数学・国語でその失点をカバーしなければなりません。また、理科・社会はすべての受験生が高い点数を取るため、これらの科目で他科目の失点をカバーすることが難しいという面もあります。
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学年や時期に応じて、どういった勉強をしていけば良いでしょうか。
都立高校入試においては、まずは学校の教科書の内容をしっかりと押さえることが大切です。それとは別に「問題を解く方法論」を身に付ける必要があるため、教科書の内容だけで入試問題で高得点を取ることは難しいのですが、それでも根本であることは間違いありません。
特に中1・2生の時点では、学校で習う内容をしっかりと身に付けることが重要です。定期テストの準備はもちろんのこと、中3生の時点で高い内申を取れるよう、学校の授業をきちんと聞いて、提出課題にもしっかりと取り組む習慣を身に付けておきましょう。
そして、これらと並行して、塾でハイレベルな問題に対応する方法論を身に付けておけば、中3生になったときに過去問演習にスムーズに入ることができます。
学年や時期に応じて公開模試を受験するのもお勧めです。公開模試を受験すれば、その時点での自分の立ち位置を知ることができます。また、結果を分析すれば弱点を知ることができるので学習の指針を立てやすくなります。
併願高校の考え方
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私立高校との併願は必ずすべきですか。
都立高校が第一志望であっても、私立高校は必ず併願することをおすすめします。
合格には学力だけでなく精神面も非常に重要です。前もって合格校を確保しておき、余計なプレッシャーを排除した状態で第一志望の入試を迎えましょう。
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おすすめの併願先の見つけ方/受け方はありますか。
「この学校なら行きたい」と思える併願先を見つけましょう。都立の一般入試は2月下旬ですが、東京都の私立高校入試は2月中旬に行われ、埼玉県や千葉県の私立高校入試はさらにその前の時期に行われます。ここでいくつか合格を確保しておきましょう。
第一志望に近い難度の学校に合格できればそれが自信になりますし、学校によっては入試得点を開示してくれるところもあるので、入試直前期の自分の実力チェックに役立つ場合もあります。
学習への取り組み方
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内申点を伸ばすためには、どのような取り組みが必要でしょうか。
科目の成績は、学習に主体的に取り組む姿勢が加味されるため、定期テストの点数が高いだけでは、良い成績を収めることはできません。
その上でアドバイスをするならば、「人の話をしっかりと聞ける生徒は、高い内申点を取れる傾向がある」ということです。例えば、先生が黒板に書いたことをただノートに写すだけではなく、話の重要なポイントを自らつかみ取り、必要に応じてメモを取るなどといった「主体的な聞き取り」ができること。これは定期テストの得点向上にも結び付きます。また、意見を求められた際に自分の考えを的確に表現することや、同級生の意見を受け止め自分の考えに取り込むといった力を発揮し、積極的に授業に関わる姿勢も役立つでしょう。
内申点、すなわち入試の際の調査書点として使われるのは中3の成績ですが、中1・2のうちから、こうした姿勢を培っておくことが大切です。
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「ESAT-J」に向けてどのような対策をすればよいでしょうか。
東京都教育委員会のページに、過去の問題スクリプトや解答例、英語力アップに向けたアドバイスなどが掲載されているので、ぜひチェックしてみましょう。
英語で自分の意見を表現するための土台は、語彙と文法です。基本的な例文を覚えるなどして表現の幅を増やしましょう。
SAPIX中学部では授業に英語オンラインレッスン(中3生対象)を取り入れています。こういった英語学習ツールを使うことも有効です。
受験や進路・進学情報の教育ニュースを発信するサイト「リセマム」にて、SAPIX中学部講師の青木が東京都立入試と、夏休みの教科別学習ポイントなどを語る記事が公開中です。ぜひご覧ください。
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- 都立日比谷高校の入試概況・入試問題分析(教科別)
- 都立進学指導重点校合格に向けた学習ポイント
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